原-原コンビという硬い契り(?)を交わした、その相方の原將人監督から、電話をもらった。
今、最新作「焼け跡クロニクル」を製作中とのこと。
「焼け跡から見つけたフィルムをチェックしたんだけど、焼けたことによってフィルムが、凄くいい感じになってるんだよね」と、私に得意げ(?)に語る声は、凄く弾んでいた。
私は、ああ、この原將人という人は天性のフィルムメーカーなんだなあ、と改めて思い知らされた感じがして、深く感動していた。もっと言えば、神がかっているなあ、と感じたのだ。
普通ならば、自宅が火事になり、自身が大切な映像素材とデータを持ち出さねば、と火の中に飛び込んで、大やけどを負って入院した、という出来事はかなり大きなダメージをうけるハズだろう。が、この出来事は、新作のネタになる、と彼は考えた。そんなふうに考えるセンス自体が尋常ではない。
火事のこととその後のことがネットを通じて情報が流れてくるわけだが、それらの情報から分かることは、火事の中から持ち出した映像データのかなりの量が、不幸中の幸いと言うべきか、無事だったらしい。
この、データが無事だった、ということが強運としか言いようがないのだが、少しだけ焦げて、その焼け具合がフィルムに絶妙な色合いを生み出したというあたりから、これはもう強運というレベルを超えて、映画の神さまが原將人自身に憑依したんだ、というしかないな、と私は思うのだ。
その神がかった原將人が、これまでの自分の家族史を新作としてまとめようとしているわけだが、製作資金に関してだけは、日本のインデペンデントフィルムメーカーは軒並み貧しいわけだが、映画の神さまも、お金には力が及ばないと見える。
で、その製作資金に関してだけは、生身の原將人自身がクラウドファンディングに頼るしかない、と腹を括った次第。
そんなわけで、彼は、クラウドファンディングの目標金額を300万円に設定。ただ今のところ、もう少しで半分に達するかな、というレベルとのこと。つまり、まだまだ、頑張らないと作品を完成させることができないわけである。
私からも皆さんに呼びかけたい。原將人監督の家族シリーズの集大成となるであろう「焼け跡クロニクル」を観てみたい、と期待する人は、是非是非、クラウドファンディングに協力してあげて欲しい。
多くの人の支援を頼みます!

―原一男(映画監督)