原將人は転んでもただでは起きない。
自分の住居が火事になるということはそう誰もが経験することではない。原君はその不幸に遭遇したが、燃えさかる家に飛び込んで火をものともせずに、撮りためた大切な八ミリのフィルムを夢中で運び出した。そして顔や腕が火傷だらけの痛々しい姿で傷ついたフィルムを編集し始める。その結果、なまなましく焼け焦げたフィルムを通して彼と愛する家族の歴史が鮮烈に浮かび上がることになる。
ドキュメンタリー作家の業が生み出したとも云うべきこのユニークな作品が劇場で上映されることを、彼の昔からのファンの一人として切実に願ってやまない。

-山田洋次(映画監督)