INTRODUCTION
& STORY
イントロダクション&あらすじ
68歳映画監督、
ある日突然家が焼けた。
わずかに生き残った
8ミリフィルムに刻まれた
家族の歴史。
そして、再生の物語。
2018年7月、昔ながらの町家が残る京都西陣。路地奥にあった映画監督・原將人の自宅が不慮の火事で全焼した。幸い家族5人は無事だったものの、すべての家財道具と保管していた映画フィルムや機材が焼失してしまう。原は新作のデータを救いに火の中へ戻り、やけどを負って入院。夫を安心させようと、妻のまおりはとっさに家族の様子をスマートフォンで撮影した。
今夜寝る場所は?着る服や靴は?火災保険は?明日からの仕事や学校は?
呆然とした夜が明けて、嵐のような日々がはじまったーー
あの日 あの時の、
なんでもない日常の記憶が、
生きる力になってゆく。
ゼロから再び立ち上がるまで、
カメラを通して見つめ続けた
セルフドキュメンタリー
慌てて買った炊飯器で作ったほかほかのおにぎり。家族揃ってのラジオ体操。双子の妹をあやす兄。そこにあるはずのものが無い悲しみ。他人の優しさ。カメラ=母の眼差しは、非日常のなかの家族の風景をつぶさに捉えていく。屈託のない笑顔を見せる子どもたちにつられ、大人たちが前を向き始めた頃、家の焼け跡から奇跡的に生き残った「あるもの」が見つかって…。
生き残った8ミリフィルムに写っていた日常の記憶が、過去と現在、未来をつなぎ、家族の歴史を紡いでいく。痛みの物語でありながら、包み込まれるような優しさと懐かしさに満ちた、驚きの傑作が誕生した。
DIRECTOR
監督メッセージ
原まおり監督
不慮の火事に遭遇して、
真っ先に心配したのは
3人の子供たちの未来です。
原將人監督
あり得るべき未来を獲得する
ABOUT
解説
「伝説的映画監督、原將人」の
軌跡
金子遊(批評家・映像作家)
COMMENT
コメント
ヤマザキマリ(漫画家・文筆家)
思いがけない大惨事と向き合いながらも、新しい日常の中で淡々と生きる喜びという糧を見つけていく家族。
人間を俯瞰で捉える視点、そして優しさと逞しさ。
人生を歩んでいくのに最低限度必要なことをこの作品は教えてくれる。
佐々木敦(思考家)
原將人は文字通り、自分の人生を映画と、自分の映画を人生と、完全に等価なものとして生き、撮ってきた。
『焼け跡クロニクル』には、そこに原まおりの視点/視線が重ねられている。
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池辺麻子(映画ライター)
原監督の火傷の痕は痛々しいけれど、カメラ(iphone!)を回すまおり監督との語らいが微笑ましく、家族が寄り添って生きる姿の力強さに心を打たれる。
奇跡的に無事だった8ミリフィルムの映像がノスタルジックな彩りを添え、ファンタジーのような美しさ。
命があって、よかった。
藤井克郎(映画記者)
悲しみの先に差し込む希望の光からは、
さすがは夫婦そろって映像作家の視点だなと感じ入った。
山田洋次(映画監督)
原將人は転んでもただでは起きない。
自分の住居が火事になるということはそう誰もが経験することではない。原君はその不幸に遭遇したが、燃えさかる家に飛び込んで火をものともせずに、撮りためた大切な八ミリのフィルムを夢中で運び出した。
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瀬々敬久(映画監督)
僕は原さん、原將人さんを応援しないわけにはいきません。
原さんの作品を初めて見たのはテレビでした。高校生の頃、たまたま見たNHK教育テレビの『若い広場』で、『おかしさに彩られた悲しみのバラード』原さんが高校生の時に作った映画、その抜粋が紹介されたのです。僕がまったく見たことがないような映画でした
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原一男(映画監督)
原-原コンビという硬い契り(?)を交わした、その相方の原將人監督から、電話をもらった。
今、最新作「焼け跡クロニクル」を製作中とのこと。
「焼け跡から見つけたフィルムをチェックしたんだけど、焼けたことによってフィルムが、凄くいい感じになってるんだよね」と、私に得意げ(?)に語る声は、凄く弾んでいた。
私は、ああ、この原將人という人は天性のフィルムメーカーなんだなあ、と改めて思い知らされた感じがして、深く感動していた。
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犬童一心(映画監督)
「焼け跡クロニクル、拝見させていただきました。
まさにお宝映像でした。
前半、火事という災いの中でも、
映画が元気と強さに支えられ陽のまま進んでいく、そこに魅力を感じて見ていました。
でもそれは、奥様のカラーなんでしょうね。
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浜野佐知(映画監督)
この映画は断じて「小さな家族の再生の物語」などではない。これは、突然襲いかかって来た災いに戦いを挑んだ一人の女性の物語だ。
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谷川建司
(映画ジャーナリスト/早稲田大学政治経済学術院客員教授)
我々は原將人という映画監督をよく知っている。原將人の撮った映画を観れば、そこに、原將人の思考や志向、そして嗜好が見て取れるからだ。原將人の映画と原將人の人格は同じだとさえ言える。
だが、新作『焼け跡クロニクル』を観て、驚きにも似た新鮮な発見があった。
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四方田犬彦(映画誌・比較文学研究)
原將人、フィルムの死と再生
戦争、地震、不意の火事。これまで数えきれないフィルムが失われてきた。
ニトロ・セルロースによる可燃性フィルムは気温が上昇すると酸化分解し、たやすく自然発火してしまう。1950年に松竹下賀茂撮影所のフィルム倉庫で起きた火事は、周辺の十数軒の民家を焼き、衣笠貞之助の戦前作品のほとんど燃やしてしまった。そして奇跡的に厄難を逃れた『狂つた一頁』を、日本映画史を輝かしいものにした。
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